GIGAスクール構想がコロナ禍を経て一気に進んで5年が経ちました。
高等学校でも一人一台端末の利活用が進み、生徒が主体的に活用を進めるシーンの研究が進みソフト面の深化がみられます。
一方で5年が経つということは、ハード面での新陳代謝の時期です。
コロナ前に導入されたGIGA初期の端末は、使用限界が近づいてきている、もしくは既に過ぎている頃です。
家庭用とは設定が違う
生徒向けの端末の用意の仕方は、学校によって大きく違うと思います。
ざっくり、以下のパターンではないでしょうか。
- 学校で一括して購入し設定を済ませた上で生徒に配布・請求
- 物品販売と共に購入できるようにし、個別に購入
- 各自が販売店等で購入してきたものを用意させる
どのパターンが多いか、教育委員会の考え方や学校の実態によって様々です。
購入方法はそれぞれでも、その先に「設定をかけて制限をする」のか「制限をせず個人端末として使わせる」のかの違いもあります。
設定をかけて制限をするのであれば、MDM(Mobile device management)を活用することになります。
各個人が購入してきて設定を済ませるのとは異なり、端末の担当者がMACアドレスを始めとする端末を識別する番号などを収集して登録することで遠隔で設定が流し込まれ、ようやく利用することができるようになります。
このMDMを掛けるか掛けないか、
掛けるにしても、何をどの程度掛けるのか、
それによって管理の幅が大きく変わってきます。
教員の端末はどうする
では教員が活用する端末はどうするのか。
多くの自治体では、校務に使用する端末は配布されているケースが多いと思います。
授業でその端末を持っていくこともできるケースもありますが、その端末がPCだとするとタブレットのような使い方はできないケースがほとんどです。
そこで、個人で購入した端末を申請することで授業で使用できるようにしているケースがあります。
もちろん、私的な利用と区別する必要があるため注意は必要です。
この場合、個人で購入した個人の端末を個人が利用しているため、上述のMDMのような設定が必要となることはありません。
一方で、教員に学校からタブレットなどの授業用端末が支給されているケースがあります。
個人情報は端末に保管しないなどの基本的なルールが定められているとは思いますが、個人で購入した端末ほど私的な利用になることはないので有難いです。
ただし、多くの場合生徒のMDMと同じような設定が流し込まれています。
アプリケーションのインストールも、担当者に入れてもらう必要があります。
アップデート問題
アプリケーションのインストールを担当者に依頼する必要があるということは、その担当になった先生がある程度ICTに長けている必要があります。
Chromebookであればブラウザベースでの利活用になるので、特別アプリケーションのインストールをするシーンはほぼありません。
Windows、Android、iOS系は色々あります。
特にAndroid、iOSはアップデートも激しい上に、設定を流し込むにもクセがあったりします。
私が扱ってきたのはiPadでのアップデートです。
Apple Configuratorというソフトを使ってiPadに接続して設定を流し込みます。
私の場合は、このソフト経由でOSをアップデートしようとすると途中で初期化してしまいます。
設定の問題だとは思いますが、OSは本体から直接、アプリケーションはApple Configratorを経由して行う必要がありました。
そして、端末によってはセキュリティアップデートの期限を迎えるものもあります。
最初期のiPadは、いよいよOSのアップデートが行われなくなりました。
先日、構内で一番古いiPadのOSアップデートをしようとしたら、他のiPadより1世代前のOSしか入りませんでした。
2016年販売のiPad pro 9.7インチ。
iPad OS 16までしか入らず、最新の18には対応しません。
一応マイナーアップデートは2025/3/31に出たiPadOS 16.7.11で対応はしてくれました。
2世代前のOSになるので、いつまで持つか・・・。
ハードの管理問題
生徒が持っている端末は生徒の管理です。
教員の端末を学校が貸し出しているのであれば、学校の管理になります。
これは義務教育段階で、自治体で児童生徒用の端末を用意している場合は同様になります。
そうなると、誰が何番の端末を使っていて状態がどうであるのかを管理する教員が把握しなくてはなりません。
多くの場合、表計算のシートやデータベースで一覧を作り管理していると思います。
端末を文房具の様に使うのが示されたこれからの教育ですが、文房具の様に管理するわけにはいきません。
管理する教員問題
ソフト面、ハード面でも管理するのは教員の仕事ということになっています。
これ、おかしくないですか?
教員の仕事って、生徒を育てる仕事です。
会社であれば、システムエンジニアなり、その端末の管理だけをする部署があってその人たちが対応しています。
小さな企業であれば、外注しているケースもあるでしょう。
それを、通常の授業や生徒対応をしている教員に「資質」として求めています。
企業の営業さんに自分の使っている端末や同僚の端末の管理をしなさいと言っているのと同様です。
完全に無理があります。
100歩譲って教員の仕事としたとき、規模の大きい学校で担当できる先生が複数いるのであれば、なんとか回るとは思います。
では、人数ギリギリの小規模校ではどうでしょう。
公立校であれば転勤があります。
仮に2人態勢でできていたとしても、立て続けにその担当者が転勤してしまったら終わります。
マニュアルがあればできることもあれば、マニュアルがあってもできないことがあります。
ICTが高度化するならば、教育現場にヒトが必要
GIGAスクール構想が入ってきてからずっと周囲に言っていることがあります。
巡回訪問でよいので、学校にシステムエンジニアを常駐させることです。
地域を決めて、2週間とかに1度でよいので終日その学校に常駐してくれる人材を巡回させるべきです。
ハード面の管理、ソフト面のアップデート、ネットワークトラブルの対応、全てをこなしていただきたいものです。
教員に求められるICTのスキルは、端末の管理ではなく端末の活用による授業の高度化です。
どうにも、相談窓口として巡回してくれる制度があったりしますが、「私たちは手が出せません」では意味がありません。
こういったことも「働き方改革」をしなければ、いよいよ教員になる人材がいなくなります。
教育にお金をかけられない国、自治体は将来が厳しいのではないでしょうか。
コメント